【東京新聞】グループホームのニーズ高まる 親亡き後 障害ある子支える場に

2021年1月27日

 

 障害のある子を持つ親にとって切実なのが、「親亡き後」の問題。自分が高齢になって体が動かなくなったり、亡くなったりした後の子どもの行く末を不安に思う親は多いが、入所施設の確保は簡単ではない。残された子を支える場として、地域の人に見守られながら少人数で共同生活を送る「グループホーム」のニーズも高まっている。 (細川暁子)
 
 
 「このままでは共倒れになると思った」。約三年前、重度の知的障害がある次女(44)を障害者施設に入所させた埼玉県の男性(79)は振り返る。次女は食事や風呂などで全面的な介護が必要。男性と妻(78)が約四十年間、自宅で世話をしてきたが、二人とも高齢になり、限界を迎えた。
 近くの社会福祉法人が運営する施設で、まずは七年ほど前からショートステイを利用してみた。他に調べた施設と比べて、職員らの対応が良く、自由度も高いことが気に入り、男性は「自分たちに万一のことがあったとしても、ここになら次女を任せられる」と感じたという。
 
 だが入所に際し、月約五万円の利用料とは別に、五百万円の寄付金を求められた。「入所を希望する皆さんから頂いている」と施設長。家庭を持つ長女に、次女の世話で負担をかけることはできない。男性は「安心料だと思って」五百万円を払い、次女を入所させた。「親に金銭的な余裕があるかどうかで、子どもの行く末は変わる」と話す。
 
 重い障害のある人は、主に同居する家族が訪問介護や通所施設などの福祉サービスを利用しながら在宅で介護している。だが、親が亡くなれば、子どもは行き場を失いかねない。そうならないよう、「グループホーム」が残された子の生活を支えている例もある。
 
 重度の知的障害がある森ひろみさん(43)は約一年前、二人暮らしだった母親を亡くした。今は三重県伊勢市のグループホーム「ぱれっと」で他の障害者の女性二人と一緒に暮らしている。ぱれっとは、森さんが約二十五年前から通う市内の作業所と同じNPO法人「ステップワン」が運営。森さんの行く末を心配した母親からの相談を受け、約七年前に開設された。森さんはその直後に入居していたため、母親の死後も生活の場に困らずに済んだ。
 
 森さんは、日中は作業所で働き、夕方、ぱれっとに帰る。夕飯作りなど身の回りのことは、「世話人」の職員らが行う。一カ月の利用料は食費や光熱費などを含め約五万円。月約九万円の障害年金と、月一万六千円の作業所の工賃もあるため生活費に困ることはない。入居時の一時金や寄付金なども不要だ。森さんは「グループホームでの暮らしは楽しい」と言う。
 
 市は二年前から、重度の障害者を受け入れるグループホームなどに運営費を補助。同NPOも年間約百七十万円の補助金を受け、夜間に配置する世話人の人件費などに充てている。理事の宮崎吉博さん(71)は「高齢化で親亡き後の問題は深刻になり、グループホームの重要性が高まっている。行政からの補助があってこそ成り立つ」と指摘する。ぱれっとの設立費用は地元住民から寄せられたバザー品やチャリティーコンサートの売り上げなどで賄った。「地元の人たちの支えも大きい」と話す。
 
 
 

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